赤ワインの作り方

黒葡萄の収穫をイメージしたイラスト
葡萄からワインへ-収穫・vendange

収穫:vendange / ヴァンダンジュ 
北半球では秋、9月から10月の間が収穫期と言われているそうです。
機械でガァァァッ!と一気に収穫するケースと、高級ワインのためのブドウや急斜面など機械が入る事が出来ない畑では手摘みで行います。

収穫した黒葡萄の選果イメージのイラスト
葡萄からワインへ-選果・triage des raisins

選果:Triage des raisins / トリアージュ デ レザン
傷んだ実や未成熟な実を取り除きます。
手摘みの場合は収穫しながら選果をして、さらにベルトコンベア状の選果台に乗せてもう一度傷んだ果や未成熟な果が残っていないか再確認!
傷んだ果や未成熟な果はワインの風味を損なう原因になる為、しっかりチェックが必要だとか。

ワイン醸造用の葡萄を除梗破砕しているイメージのイラスト
葡萄からワインへ-除梗・破砕・egrappage&foulage

除梗・破砕:Egrappage・foulage / エグラッパージュ・フーラージュ
ブドウの房から実を取り除き、ブドウ果汁を抽出しやすくするために果皮の表面に傷をつける作業です。除梗・破砕機という機械にかけて行われます。
全房発酵という除梗・破砕せずにぶどうの房ごと発酵に進める作り方もあるようですが、一般的には除梗・破砕するようです。

発酵容器に入る葡萄をイメージ風に描いたイラスト
葡萄からワインへ-発酵と醸し・fermentation&maceration

発酵・醸し:Fermentation Alcoolique・Maceration /フェルメンタシオン アルコリック・マセラシオン
除梗・破砕が終わったブドウの粒を発酵槽と呼ばれる容器に移します。
発酵槽にはステンレスや木の樽、コンクリートや素焼きの壺など造り手がその時の葡萄の状態や造りたいワインによって使い分けたりします。発酵槽の素材によって発酵の進み方が違ってくるのだとか。
発酵槽の中にはブドウの粒、つまり果皮、果肉、種、果汁が混ざり合っており、この混ざり合ったものを「マスト」と言います。

酵母菌とアルコール発酵を大まかに説明したイラスト
葡萄からワインへ-酵母菌とアルコール発酵

マストにワイン酵母を加えると酵母くん達は増殖を始めます。やがて増殖した酵母くん達が果汁の中の糖に反応してアルコール発酵が始まります。
アルコール発酵の時、温度が上昇するために香りの成分などの抽出もこの時に行われています。

赤ワインの色味とタンニンの抽出を描いたイラスト
葡萄からワインへ-醸し・maceration

発酵と同時に果皮や、種などからワインの赤い色みの元となるアントシアニンや渋みの成分タンニンなどが果汁の中に溶け混んでいきます。この抽出工程を「醸し:マセラシオン」と言います。 アルコール発酵、醸しの期間は一般的には1週間〜2週間ほどと言われているそうですが、その時の醸造環境やワインのスタイルによってこの期間は実は決まっていないそうです。

赤ワインの圧搾のイメージを描いたイラスト
葡萄からワインへ-圧搾・pressurage

圧搾:Pressrage / プレスラージュ
赤ワインはアルコール発酵・醸しの後に圧搾します。
圧搾は2回。
1回目 まず発酵槽の下から液体だけ抜きます。特にプレスする事なくマスト自身の重さで潰れて流れ出た液体だけを取り出します。これをフリーラン・ワインと呼びすっきりとフレッシュな味わいとなっています。

2回目 液体を抜いた発酵槽の中に残ったマストを圧搾。圧搾法も垂直式、水平式、空気圧式などある中で、一番優しく絞れる空気圧式が今では一般的だそうですが、昔ながらの垂直式で圧搾するワインも多くあるとか。シャンパーニュやボルドーの一部のシャトーなどはこの垂直式で素晴らしいワインを作っているところもあるそうです。
圧をかけるので抽出される成分も多く、複雑みのある濃い味わいのワインとなります。

フリーラン・ワインだけで作るワイン、プレス・ワインだけで作るワイン、フリーラン・ワインとプレス・ワインをブレンドしたりと様々なタイプのワインが作られます。

葡萄からワインになったというイメージのイラスト
葡萄からワインへ

赤ワインは圧搾後、葡萄からワインに変わるのです。

ワイン醸造工程のマロラクティック発酵の説明をイメージ風に描いたイラスト
葡萄からワインへ-Malo-Lactic-Fermentation

MLF:Malo-Lactic-Fermentation / マロラクティック発酵
圧搾したての液体はすでにアルコール発酵を終えているのでブドウ果汁ではなくワインになっていますが、リンゴ酸が多く酸味のたった味わいとなっています。これを円やかな味わいにするための第2の発酵、マロラクティック発酵:MLFと言う工程に入ります。

元はブドウに含まれている自然由来の乳酸菌や醸造機器に付着している乳酸菌で自然に発酵が行われていたようですが、自然任せでは不安定なため今では培養した乳酸菌を加えて行うことが多いそうです。この発酵は乳酸菌がリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに変える発酵となります。
円やかな味わいを目的とするだけでなくワインを安定して熟成させるためでもある工程だとか。

なので熟成させずにフレッシュ&フルーティーな味わいのワインを造る場合はMLFは行わない場合もあります。

ワイン醸造工程のブレンドの説明をイメージ風に描いたイラスト
葡萄からワインへ-ブレンド・Assemblage

ブレンド:Assambrage / アッサンブラージュ
異なったブドウ品種のワインをブレンドすることもあります。買ったワインボトルの裏のラベルにカベルネソービニオン○○%、メルロー○○%、など1種類以上のブドウ品種が表記されていたらそれはブレンドされているという事です。

発酵が終わった段階でブレンドする場合と、熟成の後にブレンドする場合があるそうです。
また、ブレンドワインと似て異なるワインが混醸ワインです。発酵・醸しの段階で異なる品種のぶどうを混ぜて作られたワインのことを言います。ワインを混ぜるのがブレンド。葡萄を混ぜて醗酵させるのが混醸、というわけです。

ワイン醸造工程の熟成に用いる様々な容器を描いたイラスト
葡萄からワインへ-熟成・Elevage

熟成=育成:Elevage / エルヴァージュ
さらに味わいに深みや複雑みを持たせてくためにワインは熟成工程に入ります。
美味しく育ていく静かなる期間。「育成」とも言われているとか。

熟成期間にワインを入れる容器には発酵槽と同様に木製の樽やステンレス、コンクリート、素焼きの壺など色々ありますが、赤ワインは一般的には「樫の木:オーク」材から作られる木製の樽で熟成させる事が多いようです。

この時樽の成分がワインに移って味わいや香りにより複雑性を高める事になります。フレンチオーク、アメリカンオーク、新しい樽、古い樽、大樽、中樽、小樽など樽の産地や状態、形状や大きさでもワインの味わいや香りに変化があるそうですよ。

樽を寝かせてじーっと熟成。数ヶ月か数年か数十年か・・・。ひたすら美味しいワインになりますようにと待つのです。早回しなど出来ない熟成のひと時。

ワインの熟成による香りと色の変化を描いたイラスト
葡萄からワインへ-熟成による色と香りの変化

熟成の時間はワインの色と香りに変化をもたらします。
仕込んだ時は青みがかった濃い青紫のワインが熟成とともに赤みをおびた色合いに変わり、さらに熟成が進むとオレンジがかった色合いに。さらに進むとアンバー系へと変化します。
香りも初めは涼やかでフレッシュな果物や花、ハーブなどの香りから酸味のあるベリー系の果物へ。さらに熟成が進むとフレッシュな果物からコンポートやジャムのような濃厚な甘やかな香りに。やがてスパイスやコーヒーやチョコレート、紅茶など乾いた感じのものに変化していきます。なめし皮や湿った土、森の下草、などの香りを感じる事もあるそうです。なんでもグラス1杯のワインの中には200種類以上の香り成分が含まれているとか・・・。

ワイン醸造の滓引の説明をイメージ風に描いたイラスト
葡萄からワインへ-滓引・soutirage

滓引き:Soutirage / スーティラージュ
熟成中、ワインの中に混じっている果皮片などの固形物や発酵を終えた酵母や乳酸菌が滓となって樽の底に沈殿していきます。滓を除いた上澄みのワインのみ別の容器(樽)に移し替えます。この作業を滓引きと言います。滓引きは熟成中何度か行われ、その度にワインの濁りが取り除かれてクリアなものになってゆきます。

ワイン醸造の卵白を使った清澄方法をイメージ風に描いたイラスト
葡萄からワインへ-清澄・collage

清澄:Collage / コラージュ
滓引きの後のワインにはまだ目には見えない浮遊物が含まれています。これらは濁りの元になってしまいます。これら濁りの成分を清澄剤を使って取り除く作業を清澄と言います。

伝統的な清澄剤として使われているのが卵白です。

ワインに卵白入れちゃうの!!と卵白が苦手な私は初めて聞いた時は驚きましたが、ご安心。卵白は最後にすっかり取り除かれるとの事。風味には全く影響無しです。

なんでも卵白の成分のアルブミンがワインの渋み成分のタンニンと結びつきやすい性質なのだとか。このアルブミンが少しずつタンニンを包み込みながら底に沈んで沈殿物になり、すべて底に沈んだ頃(2ヶ月くらい)に上澄みのみを別の容器(樽)に移し替えます。

ちなみに
コラージュに卵白を使ったと言うことはその中身、卵黄はどうなるのか?ずぅぅぅっと気がかりでした。
ワイナリーで使う訳ですから大量の卵黄が余ってしまう!!で、この時に余った大量の卵黄を使って作られたお菓子がカヌレだそうです。
カヌレはボルドーで生まれたワインありきのお菓子なんだとか。

ワイン醸造の濾過工程をイメージ風に描いたイラスト
葡萄からワインへ-濾過・filtrage

濾過:Filtrage / フィルトラージュ
清澄済みのワインをさらにフィルターを使って濾過する事で、より濁りの無いクリアなワインとなります。
しかし、濾過する事でワインの残したい成分まで取り除かれることもあるので、濾過するしない、どの程度濾過するかは造りたいワインのタイプや醸造家の考えで決めているとか。

赤ワインはもともと濃い色みを持っているので白やロゼに比べて濁りが気にならないため、丁寧に滓引きをして清澄、濾過はしない場合もあるそうです。無濾過、とかよく聞きますよね。
日本人は「無濾過」を好む傾向にあるらしいですよ。

ワイン醸造の瓶詰めから乾杯までをイメージ風に描いたイラスト
葡萄からワインへ-瓶詰めから乾杯!・embouteillage~saluti!

瓶詰め〜乾杯!!:Embouteillage~Saluti !! / アンブティヤージュ~ サルーティ!!
ワインを瓶詰めして、栓をして、ラベル(エチケット)を貼って完成です!!
このまま出荷するワイン、さらに熟成させるワインとがあります。

 ふぅ〜。長い道のりですね。大切に大切に作られているのがよくわかります。
銘柄によって工程の時間がまちまち。する工程、しない工程もあります。

この度描いたものはごくごく一般的な赤ワインの醸造工程です。

自分の飲んでいるワインの醸造過程を思いながら飲むとまた一段と味わい深くなるような・・・、気がしませんか?