ワイン売り場のPOPやレストランのワインメニューなどでこんな言葉をちょくちょく見かけます。
「スキンコンタクト」「シュール・リー」「MLF」そして「バトナージュ(これはあまり見かけないかもですが・・・)」
どれもワインの味わいに深みやコクを与えるために通常の醸造工程にさらに加えて行われるプロセスです。でもちょっと紛らわしい。どれがどれだか・・・。
今日はこのプラスワンのプロセスをピンポイントでワイン素人の私自身の理解を深める事も兼ねて描きました。
プラスワンプロセスその1- スキンコンタクト:Skincontact
通常、白ワインは除梗・破砕の後すぐに圧搾して、果汁と果皮とを分離して、果汁だけ発酵工程へ進めていきます。ところが一部の白ワインの醸造過程において、圧搾前に果皮を果汁の中に一定期間漬け込んで、果汁の中に果皮の成分を抽出させる工程を取る事もあります。これを白ワインでは「スキンコンタクト」と言います。
この時は醗酵させずに果皮の成分のみ抽出したいために、温度管理をします。温度が上がると醗酵が始まってしまうため、発酵温度以下の低温で行う果皮浸漬の工程を白ワインではスキンコンタクトと言い、主に白ワイン醸造の用語として使われているそうです。
果皮や種子、果肉の成分を抽出するプロセスを「醸し(マセレーション)」と言い、赤ワイン醸造では一般的なプロセスで、その方法は色々あります。
スキンコンタクトと同じように低温で果皮と果汁を一緒につけ込む方法もあり、それは低温浸漬・コールド ソークと言われます。「スキンコンタクト」という言葉は主に白ワイン醸造の時に使われる言葉で低温浸漬と混同しがちですが異なる様です。
低温浸漬は数日から10日ほど行われるのに対してスキンコンタクトは数時間から24時間と言われています。ずーぅうううと混乱したままでいましたが今回納得!スッキリしました。
色々調べたりする中で赤ワイン醸造に「スキンコンタクト」という言葉を使用しているものもいくつかありましたので余計混乱していましたが「醸し・マセレーション」について調べまくってやっと辿り着いた答えでした。私にとってスキンコンタクトはわかったようなわからなかった謎のプロセスだったので、今回は良い勉強になりました。
スキンコンタクトの目的は果皮に含まれる成分を抽出し、味わいや香りを深めワインに複雑味を与えることなのですが、その抽出時間や温度管理がとても難しく作り手のセンスと技が求められるプロセスとなるそうですよ。
同じ品種の同じ年の同じ生産者が作ったスキンコンタクトをしたものとそうでない白ワインの味わいを飲み比べてみるのも面白そうですね。
プラスワンプロセスその2 – MLF:マロラクティック醗酵・Malo Lactic Fermentation
マロラクティック醗酵はほとんどの赤ワインでは当たり前に行うプロセスですが、白ワインでは一部の白ワインのみ行うプロセスとなります。
アルコール発酵完了後のワインはリンゴ酸が多く酸味のたった味わいとなっています。これを円やかな味わいにするための第2の発酵、マロラクティック発酵:MLFと言う工程を行います。
この発酵は乳酸菌がリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに変える発酵となり、尖った酸味を抑え、味わいは円やかになり香りに複雑性を出してくれます。
なのでフレッシュ&フルーティーな味わいの白ワインを造る場合はMLFは行いません。
元はブドウに含まれている自然由来の乳酸菌や醸造機器に付着している乳酸菌で自然に発酵が行われていたようですが、自然任せでは不安定なため今では培養した乳酸菌を加えて行うことが多いそうです。
また、味わいへの影響のほかにワインを安定的に熟成させるという大切な目的もMLFにはあります。なんでもリンゴ酸はワインに悪さをする微生物の栄養源となるのだとか。MLFをさせる事で、微生物の栄養源となるリンゴ酸を乳酸に変えてしまう事で、微生物の繁殖を抑えるという重要な目的もあるのです。このため長期熟成させたい高級白ワインなどもMLFは大切なプロセスとなります。
MLFを行わずに造られたフレッシュ&フルーティーな白ワインは購入したら早く飲みましょうね!!
プラスワンプロセスその3 – シュール・リー:Sur Lie
醗酵完了後に通常のワインは滓引きをします。しかし、滓引きせずに翌年の春までワインを滓と一緒にしておくことがあり、この製法をシュール・リー製法と言います。
醗酵後、容器の底には醗酵を終えた酵母が滓となって沈んでいます。滓引きせずに静置しておくと、沈んだ滓はやがて自己分解し始めます。アミノ酸や多糖類などの旨み成分がワインの中に溶け込み、クリーミーでコクのある味わいとなりワインの味わいに深みや複雑性を与えてくれるのだとか。
Sue Lieとはフランス語で「滓の上」と言う意味だそうです。滓の上でワインを寝かせる製法、文字通りそのまんまですね。
シュール・リー製法を取り入れて造られたワインでよく知られているのがフランスのロワール地方のミュスカデや日本の甲州などがあります。
エチケット「Sue・Lie」と書いてあるワインを見つけると、このワインは味わいに深みが あるのかな?と私はちょっぴり期待してしまいます。
プラスワンプロセスその4 – バトナージュ:Batonnage
シュール・リーよりも積極的に滓からの旨みをワインに溶け込ませたい方法としてバトナージュと言う工程があります。シュール・リーは発酵後、発酵槽の下に溜まった滓の上に静かにワインを静置させ、時間をかけて旨み成分を抽出していくのに対して、バトナージュは人為的に発酵槽のなかを攪拌して旨み成分を抽出していく方法です。人が棒(バトン)のような道具を使って攪拌するからバトナージュと言われるそうです。攪拌の時は優しく優しく!!が鉄則だそうです。
シュール・リーよりももう少し味わいが濃くなるのでしょうかねぇ???
しかし、近年は温暖化の影響でバトナージュを行う回数を減らしたり、行わなくなったりしているところもあるそうです。
どのようなスタイルのワインを造るかによって取り入れるプロセス、取り入れないプロセスがあります。これらのプロセスを知っておくとワインを選ぶ時などにちょっぴり役にたつかもしれません。
昔勉強したはずなんだけどなぁ、すっかり忘れている事ばかりで情けなくなっちゃいます。
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