白ワインの造り方・ブドウからワインへの旅
今回は白ワインの造り方をイラストを添えて描いてみました。
実際の醸造設備とは異なっていると思いますが、プロセスの意味合いを私なりにイメージして描いています。
一般的に白ワインは皮の色が黄緑色の白葡萄や*グリ葡萄から造られます。
一般的と言ったのは、赤ワイン用とされる黒葡萄でも白ワインを造る事があるからです。
*グリ葡萄:果皮の色がグレイ(フランスではグレイ:gris/グリ)っぽく見える品種。正確には淡い緑とピンクやオレンジが混じったような色味なのだが、グレイっぽくも見えるためそれらの品種はグリ葡萄とと言われるようです)
まずは「収穫」です。赤も白もこれは同じ。
収穫:Vandange
北半球では秋、9月から10月の間が収穫期と言われているそうですが白ぶどうの場合は早いものだと8月から収穫を迎える品種もあるそうです。
収穫方法は、機械を使っての方法や、手摘みで行う方法があります。
次に「選果」
選果:Triage des raisins
傷んだ実や未成熟な実を取り除きます。
手摘みの場合は収穫の時に選果をして、さらにベルトコンベア状の選果台に乗せてもう一度傷んだ果や未成熟な果が残っていないか再確認!
白ワインも赤ワインも選果は行いますが、より繊細でクリーンな味わいが求められる白ワイン醸造の選果は、より厳格なプロセスとなります。
次に「除梗・破砕」
除梗・破砕:Egrappage・Foulage
「除梗」はブドウの房から実を取り除く工程、「破砕」はブドウ果汁を抽出しやすくするために葡萄の粒をほんの少し潰す工程を指します。
白ワインと赤ワインの違いはここからです。白ワインは破砕後、一般的にはすぐに圧搾して果汁のみ発酵させて造ります。
少しだけ潰された葡萄の粒からは果汁が流れ出します。圧搾機に入れられた葡萄も自身の重さと重力で、圧搾する前にどんどん果汁が流れ出てきます。これらの果汁はフリーラン果汁と呼ばれて、葡萄の粒とは別に集められます。
フリーラン果汁は一般的に果実の風味や品種の特性をダイレクトに反映しておりスッキリとした繊細な味わいとなります。「フリーラン果汁のみで造りました!」などのコメントを、ワインの売り場で見かけることがありますが、こんな果汁から造られたワインなのですね。ちょっと贅沢な果汁。一番搾り的な、いや絞って無いから0番絞りですね。
さて、いよいよ葡萄の実を絞ります。圧搾です。
圧搾:Pressurage
フリーラン果汁を抜き取った葡萄の粒を圧搾機にかけます。 圧搾方法はいくつかありますが、白ワインの繊細な風味を引き出すには優しく絞ってあげる必要があります。主にソフトプレスが白ワイン向きだとか。空気圧式、バスケットプレスなども用いられ、ワイナリーの規模やワインのスタイルなどによって選択されているそうです。
醗酵に進む前に行う大切なプロセスが「清澄」です。
清澄・滓引:Debourbage・Soutirage
圧搾抽出した果汁には果皮や果肉のかけらや異物が混じった状態なのでにごっています。これをまず沈殿「清澄」させ上澄みの異物のない果汁のみ引き抜く作業を「滓引き」と言います。
異物や浮遊物は醗酵に悪い影響を及ぼすことがあるためにここではしっかり清澄させてから醗酵へ進めてゆきます。
フリーラン果汁はプレス果汁に比べて混入物はほとんど混じっていないことが多いのですが、よりクリアな状態で発酵させるためにやはり清澄・滓引きをしてから醗酵に進めて行きます。
醗酵前の清澄をフランス語の醸造用語ではデブルヴァージュと言います。
デブルヴァージュは白ワイン醸造においてとても重要なプロセスの一つとなります。(どれも重要そうなのですけどね・・・)
さて、いよいよ醗酵に進みます。
主醗酵:Fermentation Alcoolique
発酵槽には主にステンレスタンクや木製の樽が使われます。清澄したクリアな果汁を発酵槽に入れて酵母を加えると、酵母達はまず増殖を始めます。やがて増殖した酵母達が果汁の中の糖に反応してアルコール発酵が始まります。
アルコール発酵の時、温度が上昇するために香りの成分などの抽出はこの時も行われています。
この時の温度は15度〜20度になるよう温度管理も重要事項となります。
白ワインのアルコール発酵の期間は一般的には1週間〜2週間ほどと言われているそうですが、その時の醸造環境やワインの銘柄によってこの期間は実は決まっていないそうですよ。
アルコール発酵を終えた果汁はここでワインになりました。
滓引き:Soutirage
発酵が終わると醗酵槽の底には滓が沈殿しています。これは発酵を終えた酵母などの亡骸・・・。
滓を除いた上澄のワインのみ別の槽に移すために再び滓引します。
ブレンド:Assemblage
ワインは単一品種から作られるヴァラエタルワインと一種類以上の葡萄品種を混ぜて作るブレンドワインがあります。一般的には醗酵が終わった段階でブレンドすることが多いようですが、そのタイミングは作り手の判断にて決めているそうです。清澄・滓引き後にブレンドしたり、熟成の後にブレンドしたり、ブレンドのタイミングによって味わいにも違いが生まれるとか・・・。
そして「熟成」
熟成:Elevage
味わいに深みや複雑みを持たせてくためにワインは熟成工程に入ります。
美味しく育てて行く静かなる期間。
一般的なフレッシュ&フルーティーな白ワインの中には熟成期間を取らなかったり、取っても短い期間だったりするそうですが、高級白ワインなどはほとんど熟成工程をたどって作られています。
熟成期間にワインを入れる容器には木製の樽やステンレス、コンクリート、素焼きの壺など色々ありますが、フレッシュで葡萄本来の香りや味わいの白ワインを作りたいときはステンレスタンクで、複雑味のある味わいにしたければ木製のオーク樽で熟成させます。
木製樽の場合、樽の成分がワインに移って味わいや香りにより複雑性を高める事になります。フレンチオーク、アメリカンオーク、新しい樽、古い樽、大樽、中樽、バリックなど樽の産地や状態、形状でもワインの味わいや香りに変化があるそうですよ。 樽を寝かせてじーっと熟成。
熟成中、タンクや樽の中で酒石やタンパク質などが滓となってそこに沈んできます。上澄みの滓のないワインのみ引き抜く滓引きを何度か行います。
滓引きを繰り返してワインの濁りを取って行きます。
滓引き:Soutirage
熟成→滓引きを何度か繰り返して熟成期間をワインは終えます。
熟成を終えたワインはこれまで行ったきた滓引きによってかなりクリーンな状態になってきていますが、この状態でもワインに溶け込み目に見えないタンパク質やペクチンなどの不純物が混じっています。特に、ワインの中に含まれるタンパク質は濁りの素となります。
これらの濁りをとる「清澄」プロセスをコラージュと言います。
醗酵まえの清澄はデブルヴァージュと言いますが熟成後の清澄はコラージュ。紛らわしいぞ!!目的は同じなのに、何が違うのだ!と思いませんか?その違いは清澄の「手段」と「目的の対象」です。
清澄:コラージュ(Collage)
一般的にはこれら熟成後に醸造過程で発生した目に見えないほどの小さな不要(余分)な成分(タンパク質や酒石酸、糖など)を沈殿させる際に清澄剤を使います。この清澄剤を使った「清澄」をコラージュというのだそうです。
一方、醸造の初期段階で果汁に混入している異物(果皮片や果肉片など)を清澄剤を使わずに自然に沈殿させて清澄させるプロセスがデブルヴァージュとなる。なるほど・・・。
最後にフィルターをかけてよりクリーンなワインに仕上げてゆきます。
濾過:Filtrage
清澄済みのワインを目のサイズが異なるフィルターを使って濾過する事で、さらに濁りの無いクリアなワインを目指します。
赤ワインと違い、白ワインは色が薄いため濁りが目立つので大半はしっかり清澄・濾過処理が施されます。
しかし、濾過する事でワインの残したい成分まで取り除かれることもあるので、濾過するしない、どの程度濾過するかは造りたいワインのタイプや醸造家の考えで決めているとか。あえて濁りのある状態で販売されている無清澄・無濾過の白ワインも近頃ちょくちょく見かけるようになりました。
最後に瓶詰して打栓します。
瓶詰め:Embouteillage
ワインを瓶詰めして、栓をして、ラベル(エチケット)を貼って完成です!!
一般的なフレッシュ&フルーティーな白ワインはこのまま出荷されお店に並んで「乾杯!!」となります。
さらに瓶詰め後に熟成させるワインとがあります。高級なワインは瓶内熟成されたものが多いようです。
一般的な熟成無しの白ワインだとしても、多くのプロセスを辿って出来上がるものなのだと改めて感じ入っています。
銘柄によってプロセスの時間がまちまち。
この度描いたものはごくごく一般的な白ワインの醸造プロセスを描きました。
白ワインならではのプラスワン工程もあるので次回はそのプロセスごとにピンポイントで描きたいと思います。
ワインって不思議とそのワインについて知れば知るほど美味しく感じる、のは私だけでしょうか?
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