シュワシュワ~っと心地良い泡のワインといえば「シャンパーニュ!!」とまず頭に浮かんで来る人は多いのではないでしょうか。シャンパーニュはスパークリングワインの代名詞的存在のワインです。
今回はスパークリングワインの代表格「シャンパーニュ」がどのように造られているのか、イラストと共に追ってみることにしました。
まずはざっくりと。「収穫」からラベルを貼って「完成」までの主な工程を簡略化したイラストで描いてみました。
その醸造方は「伝統的方式・Méthode Traditionnelle」や「シャンパーニュ方式・Méthode Champenoise」などと呼ばれています。
ざっと描いてみただけでも色々な工程を経て完成にたどり着いています。
各工程をイラストと共に追ってゆきたいと思います。
収穫・選果:ヴァンダンジュ・セレクション(Vandange・Selection)

収穫
シャンパーニュ用のブドウの収穫時期は9月から10月の上旬にかけて行われます。早いところで8月から行われているところもあるそうです。主な品種はピノ・ノアール、ピノ・ムニエ、シャルドネの3品種です。他にもいくつかあるのですが、ほとんどのシャンパーニュはこの3品種の中で作られています。収穫は「手摘み」で。この時、房の中に紛れている痛んだ実や未熟な実などを取り除き収穫します。
選果
収穫したブドウを選果台というベルトコンベアーのような台に乗せて、収穫時に取り除きそびれた傷んだ実などが混じっていないか、入念に再度確認!徹底的に!!
この「収穫と選果」はシャンパーニュにとどまらずワイン醸造では地味な工程に思えますが物凄く大切なプロセスです。品質を左右する砦なのです。高品質なワインは高品質なブドウから!!基本の「キ」ですね。
圧搾:プレシュラージュ(Pressurage)

選果を終えたら圧搾して果汁を取ります。この時、葡萄の梗はつけたまま圧搾機にかけるのが、シャンパーニュでは一般的だとか。梗がクッションとなり優しく絞る事が出来、果皮や種の成分が出にくく、繊細な果汁が摂れるのだそうです。
搾汁は2度に分けて。1回目は軽~く圧をかけて絞った果汁、これを「キュヴェ」、残った葡萄にさらに圧を加えて搾汁した果汁を「タイユ」、と区別して2つのタンクに搾汁します。さらに規程搾汁量まで定められているのですよ。
圧搾のちょっとだけ豆知識
4000Lのブドウからキュヴェは2050L、タイユは500L、合計2550Lまで!とされています。何故か。酸度を下げてしまうカリウムなどの成分や、酸化の原因となるフェノール類の抽出を抑えて果汁の一番良い、一番搾り的な果汁のみ搾汁するためだとか。またシャンパーニュは基本金色(白いと言うらしい)なので、ピノ・ノワールやピノ・ムニエなど黒ブドウの果皮の赤い色素を抽出させないための搾汁量制限なのだそうです。
清澄・滓引き:デブルヴァージュ – スーティラージュDwbourbage-Soutirage

搾汁の後はしばらく低温で保管。いくら圧を軽めにかけたとしても搾汁したての果汁には果皮や果肉、種などの破片等、不純物が混じっています。しばらく静置してそれら不純物を沈殿させる工程を「清澄」、その時間は12時間~24時間と言われています。不純物がタンクの底に沈殿したら、上澄の澄んだ果汁のみ別のタンク(醗酵槽)に移しとる工程、「滓引き」をして、いよいよ発酵へ。
一次醗酵:フェルメンタシオン アルコーリック(Fermentation Alcoolique)

白ワインを作る時と同様に、それぞれの醗酵槽の果汁に酵母を加えて醗酵させます。
これが1次醗酵。ブドウ果汁の糖に酵母が反応してアルコールと炭酸ガスが生成。この時すでに「泡」も造られているのですが一次醗酵は密閉していない為、炭酸ガスは空気中に放出されています。なのでワインの中には泡はこの時点では出来ていません。
実はここまでは白ワイン醸造とほぼ同じです。
あちらのタンク、こちらのタンクで醗酵中
例えば、ピノ・ノアール、ピノ・ムニエ、シャルドネの3品種を一次醗酵させる場合、それぞれキュヴェとタイユの2種のタンクが必要となる為、最低6個の発酵タンクが必要となります。さらに畑や区画ごとに分けられるので、スティルワインの醸造に比べてシャンパーニュ醸造はその倍の数の発酵タンクが必要となるのです。この時期シャンパーニュメゾンでは多くの発酵タンクがフル稼働しています。

(マロラクティック醗酵・MLF)
一次発酵が終わった後にMLF(マロラクティック発酵)をさせる場合、させない場合があります。それはどんなシャンパーニュを作りたいか、作り手の考え次第、腕次第です。
MLFって何?
MLFとは、一次発酵後のワインに乳酸菌を加えてその働きによってリンゴ酸を乳酸に変える発酵の事です
その目的は
・味わいを円やかにする:一次醗酵後のワインの酸はリンゴ酸が多い状態です。リンゴ酸は酸味がキツく尖った味わいとなるため、乳酸菌の働きでそのリンゴ酸を乳酸に変えることで、味わいを円やかにしてゆきます。
・安定した状態でワインを熟成させる:微生物はリンゴ酸によってエネルギー代謝をするため、リンゴ酸を減らすと微生物の活動が抑制されることになるのです。つまり熟成中に微生物が悪さをしにくく安定的に熟成させることができるのです。
作りたい味わいにキリッとしたブドウ本来の酸味をつけたい場合はMLFをしない生産者もいます。そのため熟成を安定的に行わせるための品質管理をMLFをした時よりもしっかりしないとなりません。作り手の腕が問われます。

次はいよいよシャンパーニュならではの工程です。
調合(ブレンド):アッサンブラージュ(Assemblage)

一次発酵、MLFを終えたその年のワインとそれ以前の年に仕込んだ沢山のワインを調合(ブレンド)して行きます。
調合のちょっとだけ豆知識
一次発酵終えたその年の数あるキュヴェ、タイユに加えて、リザーブワインと言われているそれ以前の年に造られたワインもブレンド対象となります。たくさんの種類のワインの中から数ヶ月かけてブレンダーという専門家によってブレンド比率を決めてゆきます。老舗の高級シャンパーニュメゾンには代々受け継がれたリザーブワインが何百種類も保管されているそうです。その中から絶妙な組み合わせ、調合の比率を決めるブレンダーは重要な役割です。しかもこの段階のワインが醸造途中のワインのため、この後の工程でどんどん変化してゆく未来の味わいを予測しての調合、すごいと思いませんか?私はブレンダーを味わいの魔術師だと思っています。高級シャンパーニュのブレンド比率は門外不出のトップシークレット。その味わいをいただく事は美味なる秘密をいただくと言う事、かなりワクワクですね。
瓶詰め:ティラージュ(Tirage)

ブレンダーによって調合されたワインが「ベースワイン」となります。このベースワインを瓶詰めし、そこへ2次醗酵の為に酵母と糖を混ぜたキュール(リキュール・ド・ティラージュ)を添加して王冠をし密閉します。この時加えるリキュールの「糖」は甘さをつけるためではなく、醗酵させるための糖です。
瓶内二次発酵:プリズ ド ムース(Prise・de・mousse)

瓶の中で再び酵母が糖と反応して2回目の発酵が始まります。瓶の中で行う2回目の発酵、つまり、「瓶内2次発酵」という訳です。この2次醗酵の時にシャンパーニュの命である「泡」が造られるのです。
2次醗酵中の瓶の中では何が・・・
この2次発酵は密閉した瓶の中で行われるため、中で生成された炭酸ガスは逃げ場がなく閉じ込められます。水溶性なのでワインの中に溶け込みます。これが栓を抜いた時にシュワシュワと立ち上る泡となるのです。醗酵を終えた酵母は「滓」となって瓶の底に沈んで行きます。

瓶内熟成:マセレーション シュール リー (Maturation sur lie)

2次発酵が完了してもシャンパーニュは15ヶ月以上の熟成期間をとります。
ボトルは寝かされて冷んやりと薄暗いカーヴの中でゆっくりと熟成させます。
熟成中の瓶の中では何が・・・
「極々微量」の酸素の混入というのが熟成をゆっくり促すこととなります。ゆっくりと熟成が進むうちにボトルの底に沈んだ滓に自己分解が起こります。自己分解した滓からは旨み成分のペプチドやアミノ酸が溶け出しワインの味わいに複雑性と深みを与えてくれます。
高級シャンパーニュを飲んだ時、トーストやブリオッシュのような香ばしい香りを感じたら滓からの贈り物🎵と思ってください。滓の自己分解は熟成期間が短いと起こりません。トーストやブリオッシュの様な風味が感じられるのは18ヶ月くらいからだそうです。シャンパーニュの最低熟成期間は15ヶ月と言われていますが、ほどんどの作り手は味わいに深みと複雑性を求めてそれよりも長い熟成期間をとっています。
瓶内2次発酵から熟成の期間の瓶が横に寝かされているのは、滓とワインの接触面を多くして滓からの旨み成分を吸収しやすくする為なのだそうです。

動瓶:ルミアージュ(Remuage)

味わいに深みを与えてくれる滓ですが、最後には取り除かなければなりません。
熟成中寝かしたボトルの底に溜まった滓をボトルの口に集めるため、少しづつ回しながら徐々に下向きに動かしてボトルを倒立さてゆく作業、動瓶(ルミアージュ)という工程を行います。これもシャンパーニュならではの工程です。
ルミアージュのちょっとだけ豆知識
昔は「ピュピトル」という木製の台を使って数週間かけて、一本一本を少しづつ手作業で回しながらでボトルを倒立さてゆく、というかなり手間のかかる作業をしていたそうですが、現在ではほとんどが「ジャイロパレット」という一度に500本の動瓶ができる機械を使って、1週間程で終える事ができるようになったそうです。なんとなく機械を使ってやるのは味気ない気もするのですが、味わいへの影響は無いとか。とは言え、トップメゾンの中でも最高級銘柄のシャンパーニュだけは職人による手作業で行われているそうです。瓶毎に中の滓の状態が一律ではないため、個々に「微妙に加減」を変えながら動瓶を行うには、やはり手仕事でしか行えません。機械にはまだまだ任せられん!!と言うところでしょうか。やっぱり味わいに違いあるじゃん!と思いました(笑)
滓引:デゴルジュマン(Degoygement)

ルミアージュで倒立状態になった瓶口には滓が集まっています。この状態で滓の溜まった部分の瓶口を-20度の塩化カルシウム水溶液に浸します。すると、溶液に浸した滓のある部分だけが凍ります。滓を凍らせたままボトルを立てて、王冠を外すと、瓶内の気圧で凍った滓が「プシュ!!」と飛び出します。瓶の中の滓が取り除かれました!!
そして、シャンパーニュの甘さの度合いを決める工程に進みます。
補糖:ドサージュ(Dosage)

飛び出した滓と一緒にワインも少し飛び出してしまいますのでボトルの中のワインの量は目減りしています。その量を補う目的と、甘さを決めるための補糖(ドサージュ)をします。作られている国によって名称は異なりますがシャンパーニュは甘さの度合いが極甘口から極辛口まで数段階に分かれています。補糖の量はそれに合わせて決めて行きます。
シャンパーニュの甘さ
極甘口「ドゥー」→ 甘口「ドゥミ・セック」→ やや甘口「セック」→ やや辛口「エクスト・ラドライ」→辛口「ブリュット」→ 極辛口「エクストラ・ブリュット」→ 超辛口・完全無添加「ブリュット・ナチュール」
このような段階分けがされています。エチケットに明記されているので良くみて購入しましょう。一般的な味わいは「ブリュット」です。個人的には補糖を全くしていない「ブリュット・ナチュール」が好みです。ドザージュ・ゼロ、とかブリュット・ゼロとかの表記があったら ブリュット・ナチュール の事です。
打詮・攪拌・透明性確認

最後にコルクで栓をして、さらにコルクの上からアルミキャップを被せワイヤーで固定、補糖したリキュールがワインと混ざるように攪拌、濁りがないか光を当てて透明性をの確認します。
もう少しだけ詳しく
打詮 :コルクで打詮したら瓶内気圧でコルクが飛び出さないように「ミュズレ」と言うアルミキャップとワイヤーでガッチリ固定します。このミュズレ、開けたらポイっと捨てられがちですが、作り手によってアルミキャップのデザインが様々、エチケット同様個性があって面白いですよ。
攪拌 :激しく振るそうです。炭酸飲料を激しく振るんかい!!と思いましたがこれは、ドサージュリキュールがちゃんとワインと馴染むような工程で重要なのだとか。ドサージュ後、攪拌しないと味わいにムラができてしまうそうです。機械で行う所が一般的ですが高級メゾンでは職人が手仕事でブンブン振ってワインとリキュールを馴染ませてくれているそうです。この後、リキュールが完全にワインと馴染むまで数ヶ月の熟成期間に入ります。一般的に3ヶ月〜6ヶ月ほどで、高級シャンパーニュはさらに長い熟成期間をとる傾向にあるそうですよ。
透明性の確認 :ボトルに強い光を当てて中身のクリア度合いを確認する作業です。ものすごく強い光を当てるとシャンパーニュの濃い色合いのガラス瓶の中の液体状態が見えるそうです。これも機械が主流ですが攪拌同様、一部の高級メゾンでは職人が1本1本ボトルに強い光を当てて目視でチェックしているそうな。機械の方が濁りや異物の確認は正確に出来そうに思われますが、熟練職人の目視は機械が見逃したものまで見つけられるらしいのです。まさに職人技!!!
ラベル貼り:アッビアージュ(Habbiage)

最後の最後にアルミシートでボトルネックを包み、ラベル(エチケット)を貼ってシャンパーニュの完成です!!!
美味しいシャンパーニュは長い長い道のりを経て私たちのグラスに注がれるのですね。ありがたし!!
とても時間と手間をかけて作られているシャンパーニュ。さらに熟成させるための保管場所の確保も必要条件となるため、醸造と保管にコストのかかるワインとなるのです。高価なはずですね。お高いのは消費者にとっては痛い所ですが納得です。
故に、普段は気軽にシャンパーニュを開けましょう!とは行かないので、製法はシャンパーニュと同じだけど、熟成期間が短めのスペインのcavaやアルザス地方のクレマンなどシャンパーニュよりお手頃価格で手に入るスパークリングワインを愛飲しています。熟成期間が短いといっても36ヶ月熟成などのcavaやクレマンもありますよ。しかもリーズナブルなので庶民の私にはありがた~いワインです。
シャンパーニュ以外にも美味しいスパークリングワインは沢山有ります。製法の違いも面白そうなので、次回はシャンパーニュ以外のスパークリングワインの醸造方を見て行きたいと思います。
これをまとめ終えた頃、とあるワインの単発セミナーでシャンパーニュセミナーを開催するお知らせを発見!何と、シャンパーニュの飲み比べ6種類ほどですって!行くっきゃない!!といそいそ参加して至福のひと時を味わいました。

