この春、社会保険出版社様発行の、「ヤングケアラー」の周知促進のためのリーフレットで、イラスト制作のご依頼をいただきました。
最近、ようやく国の課題として認知され始めたようです。とても大切な事柄がテーマだなっと少し緊張気味にお引き受けいたしました。
その時に描いた一連のイラストの一部をご紹介します。
「ヤングケアラー」という言葉の印象から、当初私は深刻なイメージを連想してしまいました。それを想定されていたのか編集者様からは、「ヤングケアラー=悪い事」というわけでないため、イラストではネガティブな印象にならないように、とのご要望をまず始めにいただきました。
かと言って元気いっぱいニコニコな子供達という風にもならないように、「柔らかく寄り添う感じ」のイラストを、とのご希望。
それを踏まえて、
親に代わって料理など家事をしている
親に代わって幼い兄弟の世話をしている
家計を支えるために働いて、障害や病気のある家族を助けている
慢性的な病気の家族の看病をしている
障害や病気で介護が必要な家族の身の回りの世話をしている
この他にも色々な家庭の事情で、家族に代わって子供達が、家事や介護・看病、世話を日常的に行っている18歳未満の子供をヤングケアラーというそうです。
家族のケアや家事をする事は決して特別な事ではありません。家族がいたら、一度は誰でもやった事がある事でしょう。だから自分が「ヤングケアラー」だと自覚がない事が多く自ら相談する事が難しい状態なのだそうです。
・病院への付き添いがあるから部活には入れない
・自分以外に介護できるひとがいない。進学も就職も考えられない。
・きょうだいの世話で毎日遅刻してしまう
・夜遅くまで家事が終わらなくて、授業中に寝てしまう。
・誰にも話せない、寂しい。
こんな事を考えて、子供、青少年としての楽しい時間、大切な時間を持てないエンドレスな日々。
大人だって同じ境遇だったら辛いと思います。
いつも遅刻してくるAちゃん、いつも授業中に居眠りしているB君、毎日授業の後は友達と遊んだりおしゃべりしたりせずにすぐに帰ってしまうCさん。何か気になる子がいませんか?
そんな子が周りにいたら彼らの「話」をきいてみてください。と大人たちの彼らへの関わり方がこのリーフレットに書いてありました。
まずは話を聞いてみる事が大切のようです。注意点として、その状況を聞いてもジャッジをしたり解決しようとしない事。
状況により、こんな支援もあるよ、ここで相談できるよ、など情報を伝えたりするのも大切ですが、最も尊重するべき事は「本人やご家族が今の状況をどう思っているのか」なのだそうです。
とても深刻な社会問題です。
この制作を通して、周囲の大人がもっと子供達に目を向ける世の中になると良いな、と思いました。
以前はもう少しご近所づきあいが盛んな時代だったような。
私が小学校に上がった頃、母が風邪を引いて寝込んでいた日の事を思い出しました。
母に代わって、ゴミ捨てに行った時、近所のおばさんがゴミ捨ての手伝いをしている私に「偉いわね」と声をかけてきました。その時、「今日、お母さんは風邪で寝ているの」と話たら、そのおばさんはお昼に鍋焼きうどんを作って持ってきてくれました。
我が家は父もおり兄もおり、そもそも「風邪」だったので大した病気でもありませんでしたが、やはりいつも元気な母が具合悪そうに寝ている姿は子供にとって不安な気持ちになるものです。そこにおばさんが来てくれた時なぜか凄く安心したのを覚えています。
元気な誰かが、自分の状況をわかってくれている、ってものすごく心の拠り所になるのだと思いました。
ましてや頼る人がいない状況のヤングケアラーの子供たちの不安は、かなり大きなものなのだと思います。そんな時誰かに話を聞いてもらえたら、状況は同じでも、ほんの少しでも気持ちが楽になれるかもしれませんね。
考えさせられるテーマのお仕事でした。